月夜の神楽

 




何十年ぶりだろうか。神楽をこんなにまじかで観るのは。

小学生の頃は、帰宅すると祖母が「お神楽がありよんよ。」という言葉に 我を忘れて荷物を放り出して、観に行ったものだった。

最後の演目は「おろち退治」と決まっている。
私はただそれだけを観たいがために夢中で役場まで走った。

そして興奮するのだ。鳥肌が立つほど。

私の主観だが、このおろち退治の演目は、中国の古典的な演劇である京劇とどことなく共通するところがあるような感じがする。

神々しい雰囲気は京劇にはないが、悲愴感というか悲哀のようなものが、神楽にも京劇にもある。

多分、”さらば、わが愛/覇王別姫”の影響だろうか。

でもこの夜は心の底から懐かしさを感じた。
思わず、今は亡き祖母の顔が目に浮かんだ。

いつもとかわらず、やさしい表情だった。

幼なじみが青年部でビールを売っていたので、思わずたかってしまった。
無料にはならなかったが、100円マケテくれた。

この友人も一緒に神楽を観に行っていたうちの一人だ。
なんだか不思議な気分だった。

時を超えて、今また一緒に神楽を観ている。
思いは違っていても、どこかしら共有するのがあるのだ。

それが想い出なのだと思った。

この日は月の輝く、ほんのりセンチメンタルな夜だった。

株式会社オアシス 不動産部 主任 佐藤啓邦
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